4月18日の日経「漂流するニッポン」連載記事。繰り返しになるがよくまとまっているのでメモしておく。
要点:
幾ら食糧自給を叫んでも物理的に5割以上は不可能(柴田明夫)。実現不可能な一国単位の「地産地消」なぞ言うのではなく二国間協定で農産物の安定輸入を確保しなければ国民は有事の時に飢えることになる。国内農産物価格は高騰し、西陣の着物と大根を交換するという戦後の食糧不足時代の再現となるだろう。
自給自足できて余剰分をべらぼうな高値で販売できる農民は笑いが止まらないことになる。「夢よもう一度」とばかり農水族はそれを期待して二国間協定を意図的に潰してきたのではないか。日本の農政の結果はよく言われているように「農家が栄えて農業が滅びる」というものだ。いやもうここまで来れば「国が滅びる」といった方がいいのだろう。
- 改革派官僚山下一仁は「役所で理想の農政は追えない」として三月農水省を辞めた。農業改革を提言すると「口を慎め」と言われる。農業振興局の次長まで務めたが農村は振興にほど遠い。「日本の政策は失敗続きだった」と言う。
- 減反政策は政府の統制に慣れた中国人ですら奇異に映る。「自由に農業出来る日本でなぜ減反なのか」と中国からの視察団は問う。敢えて作らないコメは年400万トン。日本の消費量の半分に近い。アジアでコメの買い付け騒ぎが起こる中で税金まで使って生産を減らしている。
- 余れば輸出すれば? でも生産性の向上が遅れ価格競争力がない。足らない麦や大豆に転換すれば? 手厚いコメへの補助金に浸かりきりの「ぬるま湯」から出ようとする人はいない。
- 大手商社はブラジルで現地生産に踏み切ったが、そうでもしなければ輸入できない。現地業者は「もう日本向けに輸出したくない、中国の方がいい」と言っているからだ。
- 丸紅の柴田明夫は「日本の縮小均衡農政は世界の逆を向いている」という。
- 日本経団連は農地法の改正と農業への新規参入を可能にするよう提言をまとめる予定だったが中止。理由は「政治家が何を言ってくるかわからない」から。
- 農水省は農産物関税をなくせば375万人が失業して「水田がなくなり日本が日本でなくなる」とするが、すでにある風景ではないか。
- EPA(経済連携協定)も、日本の「農業保護」の一言で身動きが取れない。いったい何を保護するのか。内なる自給にこだわるより世界の市場と歩むべきではないか。
- 族議員、省庁、業界団体。変わらぬ政官民の「鉄の三角形」既得権益を手放せず日本を内にこもらせる。道路にも医療にも同じ三角形が。それが社会の活力を奪い、長期的な食の確保を危うくし、外交戦略すら妨げる。
- 百年前、農水官僚だった柳田国男は、小規模や保守的農業に頼らず、価格競争力を高めよと説いた。処方箋は百年前からあるんじゃないか。
幾ら食糧自給を叫んでも物理的に5割以上は不可能(柴田明夫)。実現不可能な一国単位の「地産地消」なぞ言うのではなく二国間協定で農産物の安定輸入を確保しなければ国民は有事の時に飢えることになる。国内農産物価格は高騰し、西陣の着物と大根を交換するという戦後の食糧不足時代の再現となるだろう。
自給自足できて余剰分をべらぼうな高値で販売できる農民は笑いが止まらないことになる。「夢よもう一度」とばかり農水族はそれを期待して二国間協定を意図的に潰してきたのではないか。日本の農政の結果はよく言われているように「農家が栄えて農業が滅びる」というものだ。いやもうここまで来れば「国が滅びる」といった方がいいのだろう。
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